「瀬戸内海の魅力」の連載にあたって
エッセイ「瀬戸内海の魅力」の連載では、私の故郷である瀬戸内小豆島の誇れる魅力として、観光対象となりうる「産業」と「文化」にスポットを当て、その産業や文化が観光にどのように関係しあうか、とういう問いを考えていきます。
瀬戸内の様々な魅力は、昔から国内外の人びとを当地に惹きつけてきました。1934(昭和9)年3月16日、瀬戸内海国立公園は雲仙、霧島とともに日本で最初の国立公園に指定されました。それ以前には江戸末期から明治期にかけて、ここを訪れた外国人が瀬戸内の魅力を旅行日記とて世界中に紹介しています。
時を経て、2010年から「海の復権」を目的とした瀬戸内国際芸術祭が3年に1度開催され、2019年の芸術祭には過去最多の入場者数117万8484人を数えて成功をおさめています。瀬戸内へのメディアの注目度も高くなり、国際的に影響力の大きいアメリカのThe New York Times電子版が2019年1月9日に発表した“52 Places to Go in 2019”において、第7位に日本で唯一“Setouchi Islands”が選出されました。また、旅行予約サイト世界大手であるオランダのブッキングドットコムが発表した「2020年に訪れるべき目的地10選」には、高松市が国内の都市で唯一選ばれています。こうして、瀬戸内は国内外からの大きな注目を集めているのです。
アートの祭典をきっかけに、公共交通機関の利便性も向上して、瀬戸内地域はかつての賑わいを取り戻しました。高松空港と海外を結ぶ国際線の運行本数の増加などを背景に、多くの国内外の観光客が瀬戸内に訪れています。さらに、瀬戸内国際芸術祭やメディアを通して知名度が向上すると、瀬戸内を訪れる人と瀬戸内に住む人の交流によって、この地域に活力が生まれました。
このように盛況であった瀬戸内の観光が、今、新型コロナウイルスの感染拡大によって、世界中の観光とともに、大きな打撃を受けています。しかし、危機のあとには多くの人びとが観光の復興を望むはずですので、観光は実際に復興するでしょう。そして、観光の復興によって地域経済の再活性化が牽引されると期待できます。大きな魅力溢れる瀬戸内海の観光も必ずや復活するはずです。
穏やかな多島海景観と海を介して長年受け継がれてきた瀬戸内の産業や文化の魅力は、古くから現在まで訪れる人の心を癒し、変わることはありません。そのような瀬戸内海の魅力を、瀬戸内小豆島の産業や文化を通して紹介していきます。