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せとうち観光専門職短期大学

観光Web講義


堀田 明美

おわりに

 ここまでの10回は「観光の懸け橋となるもてなし」と題し、「もてなし」をテーマに綴ってきました。「はじめに」から「9回」までを要約し振り返ります。

 「はじめに」では、「もてなし」の出典、初出、意味を確認しました。初出が『源氏物語』であることから、1回では、讃岐琴平出身の村山リウが著した『源氏物語』を紹介しました。2回では、「もてなし」と「おもてなし」の違いを考えました。双方向性を持つ概念「もてなし」に対し、迎えられる側を思い、迎えるための実践である接遇としての「おもてなし」を、サミットなどの取り組みやその内容例から一考しました。3回では、英語の「hospitality」の日本語訳とされる「もてなし」と、日本語の「もてなし」の英訳との比較、および「サービス」との違いを確認しました。4回では、四国遍路の「お接待」と伊勢参宮の「お蔭参り」を、「もてなし」の言葉と共に考察しました。5回では、航空会社で接客現場の最前線と言われる空港グランドスタッフと客室乗務員のもてなしを、両者の「資質」から考えました。実は、日本の客室乗務員の現場では「もてなし」・「おもてなし」・「ホスピタリティ」の言葉自体はことさら言及されておらず、ここではその概念としての変遷に関し、各時代の航空関係者の文献から読み解きました。また、ホックシールドの「感情労働」の言葉に対し、「サービスを超えた日本型ホスピタリティの精神」として、日本の客室乗務員への「品格労働」という言葉を取り挙げました。6回では、自宅でのもてなしとパーティ―に関して、もてなしの気持ちを表すために気軽にパーティーを開く海外での例を挙げました。筆者がそこで体験した笑顔と上機嫌、温かさ、チャーミングさなどのもてなしを綴りました。また、招かれたら返礼として招き返すことが礼儀であることも経験しました。7回では、京都花街と日本旅館の「日本ならではのもてなし」を示し、それぞれの要素を文献および自伝から確認しました。8回では、「心に残るもてなし」に関し筆者の体験を綴りました。かつては日本語の「身だしなみ」の一言が、大人同士のよき関係性の基本となっていました。そうしたことから、「嗜み」を前提としたさりげなさを考えました。9回では、日本と外国を考える接点となった筆者のエピソードを綴りました。日本における今後の観光には、「日本ならでは」というシンプルな着想が、最も無理なく有効な「もてなし」につながること、また海外での「もてなし」では、異文化への尊重が関係性の基本であることを振り返りました。今後連載予定の「プロトコール(国際儀礼)」の知識および相手への尊厳の重要性を確認し、9回を次回以降の連載のプロローグと位置づけました。

 そして、このテーマ最終の10回となりました。お読みいただいている皆様に感謝申し上げます。校正やアドバイス等、多くの方々にお世話になりました。この場を借りてお礼申し上げます。

 オープンキャンパスでの筆者の模擬授業でも、「観光Web講義」からの抜粋資料をお配りしています。本校入学前の高校生の皆様、保護者の皆さま、またリカレント、リスキリングなど専門職としての知識と実践を付加しつつ、即戦力となることを目指し入学を希望される社会人の皆様のお役に立てれば幸いです。

 今回のテーマ「もてなし」の連載は、一旦ここで筆をおきます。10回目の最後に、連載各回での引用・参考文献を、文章の流れに沿った順で出典として記載します。香川での観光の様々な可能性を考えながら連載できますことに感謝をこめて。

引用・参考文献

はじめに(2023年8月18日掲載)

宮島達夫・鈴木泰・石井久雄・安部清成 (2014)『日本古典対照分類語彙表』笠間書院 p.1027

四国新聞 2023年7月20日(1面)

日本政府観光局(JNTO)HP 7月19日発表2023年6月推計値https://www.jnto.go.jp/statistics/data/20230719_monthly.pdf(2023年8月10日閲覧)

第1回 (2023年8月19日掲載)

村山リウ(1969)『源氏物語 下巻』創元社 装画 中村貞以 表紙, p.255, p.285

村山リウ(1975)『源氏物語 上巻』創元社 装画 中村貞以 表紙,序p.1

村山リウ(1978)『私の中の女の歴史』人文書院 pp.7-8

村山リウ(1982)『女の自立―『源氏物語』から学んだこと―』大阪府 対話講座なにわ塾叢書8

村山リウ(1984)『私の歩いた道』創元社

宮島達夫・鈴木泰・石井久雄・安部清成2014『日本古典対照分類語彙表』笠間書院p.41

第2回(2023年8月25日掲載)

古閑博美 (2012)『魅力行動学ビジネス講座Ⅱ』学文社 p.51

伊勢志摩サミット三重県民会議(2016)『伊勢志摩サミット記録誌』pp.104-114

表紙撮影:「志摩の鳥人」松本高正氏(モーターパラグライダーから撮影)

高松シンボルタワーHP https://www.symboltower.com/news/general/entry-1671.html

(2023年8月10日閲覧)

第3回(2023年8月25日掲載)

ケイト・スペード 訳者 林祐子(2005)『MANNERS・マナー』ブックマン社

ケイト・スペード 訳者 林祐子(2005)『STYLE・スタイル』ブックマン社

ケイト・スペード 訳者 林祐子(2005)『OCCASIONS・おもてなし』ブックマン社 表紙

加藤鉱・山本哲士(2009)『ホスピタリティの正体』ビジネス社 p.62

日本旅行2012新卒採用情報サイト・「日本旅行の歴史」https://www.nta.co.jp/recruit/company/history.html(2023年8月15日閲覧)

JTB 「JTBヒストリー110年の歩み」https://www.jtbcorp.jp/jp/ourstory/110th/(2023年8月15日閲覧)

平田進也(2004)『出る杭も5億稼げば打たれない!―カリスマ添乗員が教える売り上げ5倍戦略―』 小学館

平田進也(2008)『―旅行業界のカリスマ―7億稼ぐ企画力』 小学館

平田進也(2015)『―カリスマ添乗員が教える―人を虜(とりこ)にする極意』

株式会社KADOKAWA

第4回(2023年8月25日掲載)

前田卓(1971)『巡礼の社会学』ミネルヴァ書房 p.217, pp.222-223, p.228

辰濃和夫(2001)『四国遍路』岩波新書 pp.31-32

平成28年3月四国圏広域地方計画(国土交通省)

https://www.skr.mlit.go.jp/kikaku/kokudokeikaku/outline/pdf/shikokukouiki_honbun.pdf (2023年8月20日閲覧)

第5回(2023年10月12日掲載)

井上泰日子(2019)『[第3版]最新 航空事業論 エアライン・ビジネスの未来像』pp.194-195, pp.196-197

日本航空客室訓練部編著(1982)『人に会うって素晴らしい』日本航空客室乗員部p.142

山口誠(2020)『客室乗務員の誕生ー「おもてなし」化する日本社会』p.218

ANAキャビンアテンダント取材班(2009)『キャビンアテンダントのおもてなし―ANAに学ぶマナー術―』 角川学芸出版 表紙,目次

中村真典(2018)『元CA訓練部長が書いた日本で一番優しく、ふかく、おもしろいホスピタリティの本』晃洋書房pp.2-4

A.R.ホックシールド 石川准・室伏亜希訳(2000)『管理される心―感情が商品になるとき―』世界思想社p.7

第6回(2023年10月13日掲載)

クリスティーン・ポラス(2019)『Think CIVILITY「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』pp.113-116

第7回(2023年10月14日掲載)

西尾久美子(2007)『京都花街の経営学』東洋経済新聞社pp.167-168,pp.204-205

西尾久美子(2014)『おもてなしの仕組み―京都花街に学ぶマネジメント』中公文庫 pp.174-176

岩崎峰子(2001)『芸妓峰子の花いくさ』講談社

Mineko Iwasaki (2002) GEISHA, A LIFE Atria Books

岩崎峰子(2003)『祇園の教訓』幻冬舎

岩崎峰子(2004)『祇園の課外授業』集英社

岩崎峰子(2005)『祇園の裏道、おもて道』幻冬舎

細井勝(2006)『加賀谷の流儀―極上のおもてなしとはー』PHP研究所pp.24-32,pp.196-198

細井勝(2010)『加賀谷の心―人間大事の経営とはー』PHP研究所

阿部狐柳(2002)『こころの化粧匣』ジャパンアート社 pp.128-132

阿部狐柳(2014)『日本料理の神髄』講談社p.78

第8回(2023年10月15日掲載)

徳川義親(1939)『日常礼法の心得』実業之日本社 pp.11-15

第9回(2023年10月18日掲載)

世界文化社(1964~1966)『世界のカード』全18巻

小学館編(1964~1968)『少年少女世界の名作文学』全50巻

第10回(2023年10月30日掲載)

山口誠(2020)『客室乗務員の誕生』岩波新書p. 222

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