せとうち観光専門職短期大学

観光Web講義


多 昭彦

①国宝犬山城とその城下町(事前調査編)

はじめに(随想「文化財を観る、学ぶ、歩く」について)

新年度を迎え、本日から随想「文化財を観る、学ぶ、歩く」をお届けすることにします。日本各地において、文化財を活用した観光施策や観光による地域振興方策がどのように行われているのかについて調査し、感想などを織り交ぜて報告したいと思っています。前にも申し上げたとおり、私は観光学の専門家でも文化財の専門家でもありません。どちらにも興味があって、いろいろと調べてみたいと思っている普通のおじさん(性格は普通でないかも?)に過ぎません。そのため、せとうち観光専門職短期大学の専任教員の観光Web講義とは異なり、研究成果や論文ではなく単なるエッセイ・随想です。なので、本当は同じページに掲載することには抵抗があります。あらかじめご了承のうえ、何卒ご容赦ください。

なお、私の観光Web講義をご覧いただくにあたり、昨年度まで掲載していた「文化財保護制度の概要」等をお知りになりたい場合はこちら(「ワークショップあきの」のホームページ)にまとめてありますので、ご参照ください。

今回はその、~はじめに~に当たりますが、「①国宝犬山城とその城下町(事前調査編)」をお届けします。

1.観る(「国宝犬山城とその城下町」の概要)

犬山城天守は、愛知県犬山市犬山北古券65-2に所在する有形文化財(建造物)で、国宝(重要文化財)に指定されています。通常、このような国指定文化財の城郭建築の所有者は地方公共団体であることがほとんどですが、犬山城の所有者は、長らく個人の所有でした。現在は所有者が設立した公益財団法人白帝文庫の所有となりましたが、日本で唯一個人所有の国宝に指定された城郭建築であるということも特徴のひとつです。

犬山城は尾張(愛知県西半部)の最前線として、木曽川をはさみ、美濃(岐阜県南部)を望む小高い丘の上に建つ平山城です。木曽川にかかる橋の上からの風景や、反対に天守から木曽川を眺める風景には定評があります。特に天守からの眺望は絶景だそうです。

その南側に城下町の町並みが保存されており、国宝茶室如庵、重要文化財旧正伝院書院(日本庭園 有楽苑)や旧磯部家住宅、旧堀部家住宅などを観ることができます。また、毎年4月(令和2年及び3年は残念ながら中止になりました。)には、国の重要無形民俗文化財に指定されている「犬山祭の車山(やま)行事」も行われます。

このように、犬山城とその城下町には、さまざまな種類の文化財が適切に保存されつつ、観光地としての機能も十分に果たしているということができます。

また、最近のトピックスとしては、2021年3月29日に「愛知県の国宝 犬山城の天守は、秀吉と家康が争った小牧長久手の戦いの直後に建てられたとみられ、これまで考えられていたより50年ほど新しいものの、現存する最も古い天守であることが裏付けられたことが名古屋工業大学大学院などが行った建築材の調査で分かりました。」との報道がなされたのは、記憶に新しいところです。

2.学ぶ

犬山城の歴史としては、織田広近によって文明元年(1469)に定められた木下城が始まりで、その後、天文四年(1535)に織田信康が城を現在の城山の南西にある三光寺山に移し、関ヶ原の合戦ののち慶長六年(1601)に、清州城主徳川忠吉の老臣小笠原吉次によって現在の地に城が築かれたとのことです。

天守の構造は、望楼型の三重四階地下二階で、建築上の見どころとしては、魔除け(亀の甲羅に桃がのった形をした魔よけ)、入母屋破風(いりもやはふ:入母屋造りの妻にある破風)、唐破風(からはふ:破風のうち、中央が弓なり状にせりあがっているもの)、石落とし(石垣より突出しており、石を落として石垣からの侵入者を防ぐためのもの)、付櫓(つけやぐら:天守の入り口が敵兵に破られそうな場合に側面から攻撃を加えて防備するもの)とのことです。

また、犬山城とその城下町は、産学官が連携して、文化財としての保存と活用及び観光資源、地域活性化のための資源として開発が行われており、ボランティアガイドや映画のローケーションに使用する際の支援サービスもあります。また、リトルワールド、明治村、日本モンキーセンターなど周辺の観光施設等と広報面での連携や隣接(見下ろすことができる)する木曽川において、犬山城遊覧船、木曽川鵜飼が行われるなど、総合的に観光振興が進められていることが十分に感じ取れます。

3.歩く

今回は事前調査ということで、この辺にとどめておきたいと思いますが、後日、実地踏査に出かける予定です。その際、名鉄犬山駅で下車して、東へ向かい、城下町の町並みが見えたら、北に方向を変え、城下町や建物、資料館等を見学しながら、犬山城の天守まで登るつもりです。天守からの絶景を眺めたのち、犬山遊園駅に向かいたいと思います。なぜなら、犬山遊園駅近くの犬山橋からの眺めもまた格別とのことなので・・・。

実際にどうなりますか、次回またお届けします。最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。(多 昭彦)

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