せとうち観光専門職短期大学

観光Web講義

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石床 渉

独自の発展を遂げた「島の産業」 オリーブ栽培

 近年、小豆島ではオリーブが国内外の消費者から注目を集め、オリーブオイルやオリーブ化粧品などが人気商品となっています。2017(平成29)年の特産果樹生産動態等調査 で、香川県の「オリーブ」の収穫量は515tと全国シェアの約95%を占め1位です。香川県小豆島は、日本で初めてオリーブの栽培に成功した「日本のオリーブ発祥の地」であり、「オリーブの島」といわれています。またオリーブは香川県の県花として1954(昭和29)年に選定され、県木としても1966(昭和41)年に選定されました。今回は小豆島におけるオリーブ栽培の歴史を説明し、小豆島の自然環境とオリーブ栽培がどのように関係しているのかを解説します。

 小豆島のオリーブの歴史は今から100年以上前の明治時代まで遡ります。1904(明治37)年から1905(明治38)年の日露戦争により、北方海域に広大な漁場を獲得した日本は膨大な量の魚介類の水揚げが可能になりました。当時の明治政府はこの漁場で獲れたイワシなどの魚介類の保存と輸送の手段として油漬けの方法を採り、これに使用するための食用油であるオリーブオイルの国内需要が増えました。オリーブ油による油漬けには、缶詰を国内で製造し、海外へ輸出する外貨獲得の思惑もあったと考えられます。

 明治政府は、本格的なオリーブ計画をたて、1908(明治41)年、オリーブの苗木をアメリカから輸入して、鹿児島県、三重県、香川県の全国3か所で試験栽培を始めました。そのなかで香川県小豆島に植えられたものだけが生育し、栽培後2年ほどで実を結びました。これが「オリーブの島」と小豆島がいわれる由縁です。

 その後のオリーブ栽培成功の陰には、小豆島の先人による弛まぬ努力がありました。香川県農事試験場の初代場長の福家梅太郎は1908(明治41)年、オリーブの苗木を携えて小豆島に渡り、三日三晩もの間、寝食を忘れて山野の土質を調べてまわり、ようやく南向きの水はけのよい丘陵地帯を発見しました。現在の小豆島町西村地区です。その後、大正時代の1910年代初め頃には設備を整え採油をスタート、オリーブアナアキゾウムシなどの害虫駆除に奮闘し、試行錯誤した結果として、今日の「小豆島のオリーブ」があります。

*オリーブ加工場でオリーブのテイスティング方法を説明するスタッフ。

 小豆島のオリーブ栽培の発展には、特に小豆島の自然環境を含む、いくつかの理由が考えられます。

 オリーブの栽培条件として第一に気象条件が挙げられます。オリーブは日照時間が多いほど生育がよく、年間2,000時間以上の日照時間と年間平均気温は14度から16度の温暖地が適当とされています。小豆島は前回の「醤油製造」でも説明しましたが、年間の日照時間が2086.6時間、年間の平均気温が15.3度と気象条件からみても、オリーブ栽培に適しています。

 第二にオリーブの栽培条件として土壌が挙げられます。オリーブは、土壌に対する適応力が比較的高いのですが、過湿が苦手で排水しにくい重粘土や地下水位の高い低湿度を嫌います。栽培には砂地感のある比較的に水はけのよい土壌が適しています。ちなみに小豆島の南側の土壌は砂地のためオリーブの栽培が多くみられ、北側は粘土質のためミカンやレモンなどの柑橘類の栽培が多くみられます。

 そして第三に無理をしなくても手入れが行き届く栽培方法が求められます。毎年10月から始まる収穫は、人による手摘みで行われ、オリーブの実に傷がつきません。そのため実が酸化せず新鮮な状態のまま加工するので、良質なオリーブオイルやオリーブの新漬け(ピクルス)が製造できます。無理をしない丁寧な手摘みによる収穫方法が、ブランド価値を生み出しています。また近年では無農薬でオリーブ栽培を行う農家もあります。

 オリーブに含まれるオレイン酸やビタミンE、ポリフェノール類等の抗酸化物質には動脈硬化を防ぐ効果があり、高血圧、高コレステロール血症、心血管疾患の発祥などの危険性を低下させる効果があります。近年はテレビ番組や新聞広告などのメディア媒体で「体にいいオリーブ」として紹介され、小豆島オリーブの認知度が高まることに比例し、商品としてのオリーブの売り上げも伸びています。オリーブはモクセイ科、オリーブ属の常緑樹で食用作物としてだけではなく、観葉植物としても人気です。販売方法は店舗販売のほか、インターネットによる販売も増えています。小豆島の学校では、小学生は入学式でひとり1本のオリーブの苗木を学校からもらい、自宅の庭や畑で栽培します。また地元の高校生による、オリーブ健康料理レシピコンテストやオリーブ料理コンクールを開催するなど、オリーブが生活するうえでとても身近な存在となっています。

 1980年代半ば頃から日本の観光において、従来の「みる」観光にたいして「する」観光、つまり体験型観光が新たに注目されています。小豆島には、現在37のオリーブ関連会社があり、それらのいくつかの施設では体験観光が取り入れられています。小豆島で初めて観光農園として開園した小豆島オリーブ園や道の駅小豆島オリーブ公園は、製造工程の見学やオリーブの実の収穫体験、オリーブオイルブレンド体験などの「体験型観光」を提供しています。島の伝統的産業を観光対象とする体験型観光によって、多くの魅力が掘り起こされています。

 今回紹介した「島の産業 オリーブ栽培」については、小豆島オリーブ検定公式テキスト(香川県小豆島町著)などを参照しています。詳細については、それらもご覧ください。

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