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2021年4月29日公開

【観光の懸け橋となる接遇:第3回】「接遇」をひもとく-継承過程③

【観光の懸け橋となる接遇:第3回】「接遇」をひもとく-継承過程③

堀田 明美

 
 
 第3回では、昭和、平成の時代に航空会社を率いた2人の人物、松尾静磨とヤン・カールソンの書籍から接遇とサービスに関する考え方をひもときます。

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 松尾静磨(1903‐1972)は、昭和36(1961)年~昭和46(1971)年までの10年間、日本航空2代目の社長、その後は会長として戦後日本の航空界の発展を粘り強く見守り、日本航空を世界と渡り合えるナショナルフラッグキャリアに導いた航空界屈指のリーダーです。筆者入社時には、「臆病者といわれる勇気を持て」という言葉と共にすでに伝説の人物で、「安全第一」を掲げた松尾社長時代の10年間には、事故がなかったことも語り継がれていました。廃墟の戦後から一貫して「日本の空は日本人の手で自主的に運行すべき」とし、日本航空設立から15年後の昭和41(1966)年には、悲願であった世界一周路線の権利を獲得します。プロペラ機からジェット機への急速な発展と繁栄の時代を翔け抜けたその信条は「安全第一」、「臆病者といわれる勇気」、「魂ある繁栄」、「現場主義」、「家庭を大事に」等でした。

 葉隠れ精神を持つ佐賀出身の九州人が、「一念一念と重ねて一生」と成し遂げた戦後日本の航空運送事業復活と持続的な発展は、松尾畢生の仕事でした。松尾静磨『空に生きる』には、京都大徳寺管長猊下からの掛軸「閑 笑満天地(かん、えみてんちにみつ)」(訳意:いくつかの関門を乗り越えれば笑いの天地があり、また次の関を乗り越えられる、それが人生)を眺め、心の糧にしていたと記されています。

 機内サービスの理想に関しては、「外貨の獲得という錦の御旗」のため「真心を込めた仕事」による「信用」を積み重ねる中、松尾静磨の著書『日本の航空』内、「お客様第一主義」に、映画「歴史は夜作られる」の給仕長ポールのサービスを理想としていた旨の一文があります。「単に親切というばかりでなく、お客様の好みや個性をたくみにつかみ、非常に行きとどいていて、しかも度をすごさぬ折目正しいもの」を目指していたことがわかります。筆者もこの映画を鑑賞し共感を得ました。

 また、特に外国の方々に対する強いアピールとして、日本女性の優しさ、親切さという日本らしさを挙げていますが、同時にそのことが相手の気持ちに適応しなかったり、時に親切すぎることも指摘しています。戦前の航空産業の「親方日の丸」方式ではなく、洗練され、近代的であり「お客様第一主議」としての不断のサービスの向上、その先の倫理観への涵養も見受けられます。

 松尾静磨没後翌年の昭和48(1973)年に、ICAO(国際民間航空機関・現在加盟国191カ国)から、第8回「エドワード・ウォーナー賞」が贈られています。この賞は、世界レベルでの民間航空への貢献が偉大である個人または機関に授けられる名誉ある賞です。

 次に、スカンジナビア航空(北欧3国が共同で運行するエアライン・以下SASと省略)のCEO(最高経営責任者)であったヤン・カールソンが言及した「真実の瞬間」は、その著書名にもなっています。現在でも多くの「接遇研修」で、接客の15秒を「真実の瞬間」として説明していますが、「真実の瞬間」とは、昭和61(1986)年、SASの旅客1000万人が、1回のフライトでそれぞれほぼ5人のSASの職員に接し、その接客時間が平均15秒であったというデータ分析からの言葉です。顧客の脳裏には、年5000万回のそれぞれの15秒がSASの印象として刻まれることから、その間の接客態度が企業の成功を左右するとしました。

 また接客最前線の15秒の担当者には責任を委ねることで、「最良の選択」だったという顧客本意の納得を導いたとされ、現場への権限移譲の英断とリーダーシップが評価されています。

 恩蔵直人『新訂マーケティング論』(放送大学教材)では、高い顧客満足度を維持するため「個々の従業員は、サービスを提供するチームの一員である」という強い自覚が必要であるとする例としてSASの取り組みを挙げ、ヤン・カールソン指導のもと全従業員が特別のサービストレーニングを受けたことを指摘しています。

 今回は、航空会社二人のリーダーの接遇に対する考え方を視座に、それぞれの著書からのサービスを見据えた考察としました。

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