せとうち観光専門職短期大学

観光Web講義


多 昭彦

⑭登録無形文化財「書道」「伝統的酒造り」

 昨日から急に寒くなりました。新型コロナウイルス感染症が少し落ち着き、なんとか行楽の秋が楽しめるかと思いきや、土曜日から日曜日にかけての雨をきっかけに気温が急低下し、北海道では雪が降りました。これで紅葉はますますきれいになるので、寒霞渓など楽しみですが、体調には気をつけたいところです。

 さて、まだ暑かったか週末の15日(金)に文化審議会の答申があり、登録無形文化財に「書道」と「伝統的酒造り」を登録すべしとの答申がなされました。これまで、無形文化財には「芸能」と「工芸技術」という区分があったのですが、そこに「生活文化」が新たに設けられました。保存及び活用のための措置が特に必要な「生活文化」のうち、①芸術上の価値の高いもの、②生活文化に係る歴史上の意義を有するもの、③生活文化の成立又は変遷の過程を示すもの、のいずれかに該当するものを登録するとのことです。

 ここで問題です。この無形文化財の登録制度ができたのは、いつだったでしょうでしょう?覚えていますか。以前に「文化財と観光」で取り上げたことがあります。

 正解は、令和3年4月23日。文化財保護法が改正され、公布されました。その時にも書いたと思いますが、この改正の趣旨は、社会の変化に対応した文化財保護制度の整備を図るため、無形文化財及び無形民俗文化財の登録制度を新設して、幅広く文化財のすそ野を広げて保存・活用を図ることでした。今回、その第1弾として、この2件が答申されたものです。また、この制度の背景には、新型コロナウイルス感染症により、多様な無形の文化財について、公演等の継承活動に深刻な影響が生じているため、迅速に登録を進め国により保護し、予算措置等の支援を行いたいという事情があったことも思い出してください。

 「生活文化」については、20年以上前くらいから、無形文化財の範疇に組み込むべきとの議論がありましたが、その価値づけや保持者及び保持団体の特定が難しいという理由から、なかなか実現しませんでした。長年に渡る文化庁の調査官の調査・研究及び検討の結果、これらの課題を解消し「書道」及び「伝統的酒造り」の登録に至ったことは画期的なことで、誠に喜ばしい事だと思いますし、文化財制度がやっと時代の流れに乗るようになってきた証拠です。

 文化庁の解説によると、「書道」の保持団体は「日本書道文化協会」で、登録の要件は以下のとおりとなっています。

一 文房四宝(書、墨、硯、紙)の使用を原則とすること。

二 伝統的な書法によること。

三 次の分類に応じた書表現を行うこと。

  〇漢字の書、〇仮名の書、〇漢字仮名交じりの書、〇篆刻

 また、「伝統的酒造り」は「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」が保持団体で、登録の要件は以下のとおりとなっています

一 原料を酒造りに適した状態に前処理すること。

二 酒造りに適したバラこうじをつくること。

三 もろみを発酵させ、目的の酒質にすること。

 この2件の保持団体は、ともに東京都に位置していますが、その伝承者は全国におられ、現代の国民生活にも密着したものであることから、地域創生や観光振興にも繋がるものと期待するところです。

 これで、第14回目が終了しました。次回が最後、15回目となります。昨年度のものと合わせる30回目になりますので、~おわりに~にあたり、なんとか上手くまとめたいと思いつつ、・・・本日はこれまで。

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