せとうち観光専門職短期大学

観光Web講義


多 昭彦

⑨今後の観光へのヒント?

 週末に「朗報」が届いた。朗報と言っても、日常の業務に関して、監督官庁から無事に許可をもらったというだけなので、個人的に飛び上がって喜ぶほどのものではなく、ただ単にほっとしたというだけだが、おかげで、休日はゆっくりと新聞を眺めるだけの心のゆとりが生まれた。

 近頃は、最新のニュースがスマホに飛び込んでくるので、新聞で初めて見るニュースというのがかなり少なくなり、おそらく新聞を購読する人も減っているだろうと思われるが、時には地方の情報欄や広告の中に貴重なヒントを発見することがある。

 8月21日の毎日新聞朝刊の広告欄に、「興福寺の知らない顔」という見出しが躍っているのに目を惹かれた。読んで見るとこれまでにはなかった興福寺の見学ツアーのお知らせで、その内容を要約すると以下のようになる。

 〇世界遺産・興福寺で「朝の貸し切り拝観」を、9月27日に実施する。

 〇これは7月に続いて2回目である。

 〇僧侶の案内で、通常の拝観が始まる前の時間に、国宝・東金堂を貸し切りで拝観する。

 〇普段は入ることができない後堂(お堂の後ろ部分)にも特別に入ることができる。

 〇僧侶による新型コロナウイルス終息祈願も堂内で体験できる。

 〇時間は午前7時45分~午前9時頃で、その後も引き続き東金堂を拝観することができる。

 〇参加費3,000円、定員20人(先着順)

 興福寺は、奈良市登大路町に所在する寺院で、奈良公園内にあり近鉄奈良駅からも近く、多くの観光客が訪れる有名な寺院である。多いのは人だけではなく、鹿もたくさん歩いている。以前に書いたような観光を目的とした宗教施設の機能のひとつである「美」と「無」の世界を感じるためには、多少混雑し過ぎているように思っていたが、この見学ツアーであればそれが可能となるのではないか。

 「朝の貸し切り拝観」では、境内に、僧侶1人、見学者20人しかいない静かで荘厳な空間が構築されるものと予想される。また、案内して、解説してくださるのが、現職の僧侶の方であり、見学者は本物の興福寺を堪能することができる。加えて、普段入れない場所への入場や終息祈願を堂内で体験することも、日常から脱却した貴重な体験となることであろう。これで、参加費が3,000円というのは、リーズナブルだと思った。

 コロナ禍にあって、密にならず、見学者が大声を発することもなく、本物の文化財を観ることができる。また、人々の傷ついた心を癒してくれるような「美」と「無」を感じることができるこのような試みは、今後の観光振興策のヒントとなるのではないだろうか。

 8月23日の毎日新聞朝刊の奈良版では、「観光拠点の期待も」という見出しを発見した。奈良県が県内の歴史文化資源の活用拠点として、約100億円の予算を投じて整備する「なら歴史芸術文化村」が来年3月にオープンするという記事である。その内容を要約すると以下のようになる。

 〇奈良の歴史文化や芸術に触れることで「『新たな視点・感性』が生まれる場」を提供する。

 〇国土交通省から道の駅に選定されている。

 〇全国初となる、彫刻、絵画・書跡、歴史的建造物、考古遺物の4分野の文化財の修復作業を通年で公開する「文化財修復・展示棟」(専門スタッフが修復過程を解説、質問にも対応する。)を設置する。

 〇国内外から招いたアーティストとの交流や作品を展示する「芸術文化体験棟」を設置する。

 〇その他、県産特産品や伝統工芸品を販売する店や産直レストラン等がある「交流にぎわい棟」と観光情報等を発信する「情報発信棟」を設置する。

 〇文化村の西側に、米ホテルマリオットインターナショナルと積水ハウスが共同で展開する、「フェアフィールド・バイ・マリオネット」を誘致する。(5階建、客室数100室。宿泊に特化し、食事や土産品は、文化村や周辺の店を利用してもらう。)

 このように、奈良県の歴史・文化から食文化まで、奈良のええもん、ほんまもんを集めた「なら歴史芸術文化村」に個人的にはおおいに期待する。

 最後に、8月21日の毎日新聞朝刊の広告欄に、『その気遣い、むしろ無礼になっています!』という書籍の広告を見つけた。著者の肩書は、元CAで、人材教育講師となっている。(私は、そうでなくてもわがままに生きているので、)最近はこの手の本には興味がなくなっていたが、自分の考え方に偶然ピタリと一致したので、興味を持った。それは以下のような点である。

 〇何かと「すみません」と謝りすぎ

 〇「大丈夫?」と心配しすぎ

 〇「私なんて・・・」と謙遜しすぎ

 〇何でも相手に合わせて、意見を言わなさすぎ

 〇相手に気遣いをさせないようにしすぎ

これらの行為が、かえって裏目に出て、相手との関係がギクシャクすると宣伝には書いてある。よって、「あえて引く」「見ないふり」も大人の気遣いだそうだ。観光に通じるところがあるかどうかわからないが、機会があれば読んで見たいと思った。

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