せとうち観光専門職短期大学

観光Web講義


平 侑子

「人と動物とレジャーの接点」連載にあたって

 エッセイ「人と動物とレジャーの接点」では、われわれにとって身近な隣人であり、道具のように使役する存在でもあり、愛情を注ぐ対象でもあり、時に害でもある動物たちが、レジャーの場面でどのように関わっているのかを見ていきます。

 われわれの暮らしは、動物と共にあります。多くの人が、牛や豚、鶏などの動物を食べて暮らしています。イヌやネコ、小鳥などのペットを飼っている人も少なくありません。ペットを飼っていなくても、生活圏内にはカラスやスズメがいたり、野良ネコがいたりと、頻繁に動物を目にする機会があります。TwitterなどのSNSでは、動物のかわいい写真や動画が度々話題になっています。一方で、たとえば農業従事者にとっては、一部の動物は畑を荒らす害獣であり、憎たらしい存在としても捉えられるでしょう。

 日常生活においてこれほど身近な存在でありながらも、動物の存在が観光やレジャーといった切り口から語られるのは非常に限定的でした。観光学では、エコツーリズムにおける野生動物とその生息地への理解や保全といったといった文脈で登場するのが数少ない例の一つでしょう。エコツーリズムは地域の自然や文化等への理解を深めながら、観光による地域へのダメージを最小限に留めることを意識した仕組みです。この場合動物は、観光資源でありつつも保全すべき自然の一部として位置づけられています。

 人間と動物のかかわりについて考える「ヒトと動物の関係学」においても、観光やレジャーに関係する動物については、動物園を除いて研究の蓄積はそれほど多くありません。例えば、石田戢・濱野佐代子・花園誠・瀬戸口明久著『日本の動物観―人と動物の関係史』(東京大学出版会,2013年)において、動物はペットやコンパニオンアニマルに代表される「家庭動物」、畜産動物などの「産業動物」、野鳥や野猿などの「野生動物」、動物園などで飼育される「展示動物」に大別されています。おそらく旅やレジャーに関わる動物はこの枠組みのどれか一つには収めることはできず、場合によってはどれにも分類できない可能性もあります。

 本エッセイを通して、観光やレジャーといった場面でわれわれは動物とどのような関係を紡いできたのかを考えていきましょう。

← この教員の講義一覧へ戻る